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残すか、残さないか

歯の状態があまりに悪くなってしまうと
抜歯をせざるを得ないことがあります。

では、抜くか抜かないか、は
どういう基準で決めるのでしょうか。

これは実ははっきりした基準はありません。
次の3つの要素により、
その基準は
いくらでも変わりうるのです。
3つの要素とは
医院(歯科医)側の要素、患者側の要素、治療的要素

まず歯科医側の要素ですが
抜歯の判断基準は
実は医院によって
あるいは歯科医によって
大きく異なります。

本来あってはならないことだと思うのですが、
歯科医によって、あるいは医院によって
得意分野があったりします。

以前こんな話を読んだことがあります。
とある分野で有名な大学病院の教授が
一人の老医師に尋ねました

「先生の専門分野はなんですかな?」

老医師は答えました。
「私の専門は臨床です。」

それでいいんだと思っています。
というか、それがいいと思います。



次は患者側の要素です。

抜歯するかどうかの判断は
患者さんの希望や
お体の病気、
年齢などによっても
大きく変わります。

聞けば大概「残したい」とおっしゃいます。
当然だと思います。

しかしながら
現実を踏まえたうえで
それでも残したいのかを
決めてもらう必要があります。

厳しい歯を残すのは
大変です。

治療は痛くないようにしますが

これは大けがの治療に似ていて
かなりの時間もかかり
費用もかかり、
なんとか残ったとしても
機能不全とか
結果がどうも安定しない、
なんか疲れてくると調子が悪いとか

時に周りの歯に負担をかけてしまったり
口腔内に炎症が残ったりすると
糖尿病など全身にも影響することが分かっています。

そして
逆に生活の質が落ちたり
なんとせっかく治したのに
あまり長持ちしなかったり
といったことまで起こりうる

そういうことがあるかもしれない、
それでも残すことをトライすべきか
ということになります。


以前、歯科医が山のガイドに似ているのでは
と書きましたが

登山をするかどうか決める前に
現実も知ってもらう必要があります。
時間をかけて気持ちを整理してもらうこともあります。

どちらかというと
自分はできる限り歯を残したい
歯科医です。

歯は相当悪くなっても
顕微鏡や接着治療で
劇的に良くなることもあります。

しかしながら、
さんざん時間や手間暇をかけても、結局だめになることもあります。

そんな時
残すことにこだわりすぎたのではないか、
逆に患者様に迷惑をかけたのではないか、
と思うことがあります。


最後は治療的要素です。

問題のある歯を残しすぎると
次の治療の選択肢が狭まることがあります。

たとえば炎症で歯を支える骨が減ってしまって
次にインプラントしようとしても
健康な自分の骨が足りなかったり
(骨を作ることもありますが
治療が複雑になり、限度もあります)

その歯だけでなく
両隣の歯を支える骨まで減ってしまって
問題が両隣まで、将棋倒し的に
波及してしまったり

今後の人生のQOLを向上させる
治療をするためには
抜いたほうがいいのでは、という判断に
なることもあります。


以上のような3つの要素が
複雑に絡み合っている状況で
最善の方針を考える、

歯科医という職業は
なかなかAIでは難しいんだろうなあ
と思います。


 
2021年01月28日 18:22

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